LHC加速器

LHC 加速器 (Large Hadron Collider) はヨーロッパ共同原子核研究機構(CERN, セルン研究所)により建設され、 2009 年より物理運転を開始した世界最大のハドロン衝突型加速器です。LHC 加速器の円周の長さは、27 km にもおよび、 これはおおよそ山手線1周分に相当します。LHC 加速器はフランスとスイスの国境をまたぎ、地下約 100 m の位置に、 以下の施設が設置されています:

  • 1)加速されたの軌道を保つための超伝導マグネット、
  • 2)粒子を実際に加速させる加速空洞、
  • 3)6つの実験施設

6つの実験施設とは、ALICE実験、CMS 実験、ATLAS 実験、LHCb 実験, LHCf 実験, TOTEM実験です。
LHC加速器に使われているの超伝導二重極マグネットは, 長さ 15 m で、全部で 1232 本あり、磁場は 9 T(テスラ)です。これらのマグネットは、時計回りと反時計周りの LHC リングを構成し、これによって加速された粒子が、上記の6つの 実験ポイントで衝突するように設計されています。

LHCの各実験グループでは、それぞれ狙っている物理が異なります。例えば ATLAS 実験や CMS 実験では、LHC での 高エネルギー陽子・陽子衝突に着目し、衝突によって発生する粒子を解析することにより、物質の質量をになう未発見の ヒッグス粒子の発見や、標準模型* を超える新しい物理の探査などを目指しています。一方 ALICE 実験は、陽子の約 200 倍以上の質量を持つ鉛の原子核同士を高エネルギーで加速・衝突させ、温度にして4兆度以上という、人類が生成できる 最も高温の状態を生成します。それによってビックバン直後に存在したとされる宇宙のひとつの形態、クォーク・グルーオンプラズマに着目した実験です。

LHC 加速器は2009年に、陽子-陽子衝突 900 GeV で、物理運転を開始しました。 その後 2010年には、陽子-陽子衝突 7 TeV (7000 GeV) 、同年11月には鉛-鉛原子核衝突 (2.76 TeV(核子当り)) に成功しました。2011年には 陽子陽子-陽子衝突 7 TeV, 2.76 TeVと鉛-鉛衝突 2.76 TeV の実験が行われました。2012年は 陽子陽子-陽子衝突 8 TeV と、秋には陽子と鉛原子核衝突 (p-Pb) 4.4 TeV の実験が予定されています。

LHC 加速器は、2012年11月から 2014年9月まで、 LHC加速器のビームエネルギーとビーム輝度(ルミノシティ)増強のため、長期シャットダウン期間に入ります(2012年6月現在)。LHC 加速器のアップグレード後は、本来の性能である 陽子-陽子 14 TeV (ビーム輝度 L = 10^34 cm^-2 s^-1) , 鉛-鉛 5.5 TeV (L = 1027 cm^-2 s^-1) での物理実験が予定されています。

* Note 1: 1バンチの長さ: 7.5 m in space,
* Note 2: 25 ns in time = 40 MHz, 1 full round ~ 89 microsecond --> 3,564 bunches.